放送大学のビデオをたまたま録画していて、興味を持ち、図書館から借りました。 後半部分は録画してなくて、テキストからです。 アジアと漢字文化 (放送大学教材)、宮本 徹、大西 克也、放送大学教育振興会 (2009/3/1)
読めないうちに返却期限がきて、195-197ページのメモ書きです。
「木」という字にはモクとボクという二つの字音がある。「材木」とい うときにはモクと読まれるし、「巨木」というときにはボクと読まれる だろう。しかし,この二つの熟語における「木」は、いずれも樹木という意味であって,そこに何ら違いはない。実際,先ほどの二つの「楽」が『広韻」の別々の箇所にその記載を見出せるのに対し、「木」については入声・第一屋韻の「木」小韻に, 「木 樹木。『説文』日,「木, 冒也。』......真下切。」と一箇所見えるのみである(第五巻)。おそらく 中国では,古今を通じて「木」には一種類の字音しか存在しなかったに違いない。ところが「木」の日本漢字音には,モクとボクという二つの字音が存在するのである。このように,日本漢字音には原則的に字義の区別に関与しない読み方の区別が存在する。これらはいくつかのグループ――これらはあたか も地層が堆積するように後の時代に伝承されてきたので、漢字音の「層」と呼ぶに分けることができるが,その中でも特に重要な位置を占めるのが呉音と漢音と呼ばれる層である。
(2) 漢字音の「層」と中国語原音
日本における漢字の受容は,朝鮮半島との頻繁な往来を通じ,四世紀 末~五世紀初頭以降,本格的に行われるようになったと考えられてい る。漢字の受容――おそらく,より正確には漢字によって記された漢文文献の将来――は,その後長期にわたって持続的に行われたが,それに伴い日本にはさまざまな段階の中国語原音が移植された。長期にわたる持続的な漢字の受容というのは,おそらく他の漢字文化圏においてもそう大きく異なるものではないであろう。
しかしながら,このことは直ちに当該地域の漢字音に「層」を形成す ることを意味しない。つまり,長期にわたる持続的な漢字の受容が「層」 形成の必要条件とはなっても,十分条件とはならないのである。同じく長期にわたって漢字を受容した朝鮮半島やベトナムでは、漢字音の「層」 は生み出されることはなかった。 呉音の母体となった中国語原音が話されていた地域,あるいはその移 入の経路については,いまだ十分解明されていない問題が残っている が、その「主層」を形成したのは、時間的には『切韻』に見られる狭義の中古音よりもいくぶん前の段階,空間的にも「切韻」の基礎方言とはやや隔たる地域の方言であったと考えられている。一方,漢音は,時間 的にはそれよりも下り,『切韻」の体系が大きな音韻変化を蒙った後の 唐代中期の段階,空間的には唐の都である長安地方の方言状況を反映していると考えられる。具体的資料で言えば,慧琳 一切経音義』(787~ 807年撰)に反映する体系が漢音に近いとされる(沼本氏前掲書)。 日本漢字音においては,このような中国語原音の違いに基づく漢字音 の差異が,「呉音」や「漢音」といった名称の下で個別的ではなく体系的に保存されている。まさしく、地層のごとく異質な漢字音の「層」が、互いに混じり合うことなく今日まで伝承されているのである。先ほど 例に挙げた「木」という漢字がモク(呉音)とボク(漢音)という二つ の音を備えているという問題は,実は中国語原音で「木」と同じ声母 m-を有していた漢字が,原則として呉音ではマ行,漢音では多くバ行 で反映するという個別字の枠を超えた体系的な問題として日本漢字音全体に広がっていく。 中国語原音を体系として保存していること,これが日本漢字音の特徴 だと言えるだろう。
ここで述べられていることは、呉音と漢音が別の層であるということと、朝鮮半島やベトナムでは見られない理由があったと言うことだと思います。つまり、倭国は呉音を取り入れたのに対し、日本は漢音を取り入れたこと関係があったと思います。
ウィキペディアの引用ですが、
旧唐書には日本について『倭国』と『日本国』の条がある。「日本」の名称に関して次の記述がある。
日本国は倭国の別種なり。 その国日辺にあるを以て、故に日本を以て名とす。 或いはいう、倭国自らその名の雅ならざるを悪み、改めて日本となすと。 或いはいう、日本は旧小国、倭国の地を併せたり、と。
どうして、倭国と日本は別種であると思われたかということですが、呉音と漢音の違いがあったのではと思います。英語の例で考えれば、イギリスとアメリカでは同じ英語といっても微妙に違い、発音で別の国であると認識できる可能性があります。文字だけではわからないのが、発音で違うと感じたのではと妄想します。倭国から日本へ政権交代したときに、倭国の人が全滅したのではなく、日本に取りこまれたということです。
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