2017年11月22日水曜日

山梨県の名字とハ行転呼音現象

 山梨県の名字を調べようと思い、図書館で
   県別名字ランキング事典、森岡浩著、東京堂出版、2009年10月印刷発行
を、借りてきました。山梨県のところを見ると、渡辺が一位で、二位が小林です。渡辺は富士吉田市に特に多いということです。富士吉田市は山梨県の東南に位置し、富士山の近くで、農耕に名は向かない土地のようで、渡辺はもう少し後の時代であろうと思われます。小林は全県に分布するようです。隣の長野県を見ると小林がトップで、二位の田中に二倍以上の差があるそうです。長野県から小林が伝播したことを想像させます。
 また山梨県に戻りますが、他県ではあまり多くない名字が多く見られるのが特徴とのことです。読み方についてのところ、驚きました。第六〇位の藤原です。これを普通はフジワラと読みますが、山梨の電話帳では八六パーセントがフジハラと登録されているそうです。藤原だけでなく、梶原の七一パーセント、萩原の七九パーセントがハラの方とのことです。「今日は」は発音ではコンニチワです。このハ行音がワ行音に変わるのが、ハ行転呼音現象というそうで、西暦一〇〇〇年頃からとのことです。(ここは、図説 日本語の歴史、今野真二著、河出書房新社、六五頁より)。つまり平安時代以前の状態がこの地に残っていると言うことです。甲斐の国司の初見が天平三年(七三一)と遅いこととの関係があると思われます。律令制が始まってから、小林グループが山梨県へやってきたことを暗示します。
 ついでに、ランキング事典で、林の多い地域をメモっておきます。各県で一〇位以内です。富山県二位、石川県六位、岐阜県四位、滋賀県九位、京都府九位、和歌山県六位、山口県七位、徳島県七位、です。メジャーな名字なので、かなり広がっています。期待の福井県は一三位でした。

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