2021年1月21日木曜日

日本書紀の暦

  百人一首に興味を持ち、図書館から『百人一首の図像学』、岡林みどり、批評社を借りてきました。富士山と「富士山麓オウム鳴く」の語呂合わせみたいな話が出てきたときには読む気が失せましたが、161頁に暦の問題が書いてありました。偶然に見たといって良い話です。他にも面白いことが書かれている本です。が、よくは読んでません。以下引用です。

2018年の温故学会での瀬間正之氏の講演によると、「日本書紀」では神武天皇から安康天皇までは儀鳳暦で、雄略天皇からは元嘉暦で計算されているとのことであり、・・・

 この講演会のことはわかりませんが、出所は『日本暦日原典』にあるようです。図書館でメモってきました。アナログで転記ミスがあるかもしれません。

『日本暦日原典』の507〜508ページ

小川清彦氏の「日本書紀の暦日について」について言われているように日本書紀の暦日は、5世紀のなかばまで儀鳳暦を用い、そのあとは元嘉暦で計算されたとすれば、書紀の暦日と計算とはよく一致することが明らかにされた。ただしそのためには書紀は三か所で閏字が脱落していることを認める必要があった。・・・  なお本書掲載の445年より前の書紀には、242個の月朔干支がある。儀鳳(平朔)・元嘉両暦でそれらを計算して見ると、どちらとも合わないものが7ある。これらは書紀の誤りと考えられる。残りの235は儀鳳と完全に一致するが、元嘉暦によると32の不合(干支19、月名13)が見出される。書紀の450年頃までは儀鳳の平朔で計算されたとする小川氏の説の正しさが証明される

 日本書紀の構成の問題を示しているようです。編集方針が二つに分かれていて、最初の儀鳳暦の部分は神話的部分、後の部分は一応歴史的に整合性を持たせようとしたと思われます。書紀の中心的な記述に天武天皇を基準にしようと最初は考えられていたと思います。神話の部分では天武天皇を神武天皇として始まる歴史に、ある程度の正確性を持った歴史を考えて記述する部分に天武天皇を雄略天皇として持ってきていると考えられます。これは、日本書紀の生まれた時代からの共通認識であったとすれば、大伴家持が万葉集に雄略天皇の歌をもってきて不思議ではないです。単に大伴氏が自分の祖先の事だけで入れたのではなく、もっと一般性をもった話で世間に受け入れられたと考えることができます。

 ついでですが、小川清彦氏です。小川清彦著作集『古天文・暦日の研究ー天文学で解く歴史の謎』、斉藤国治編、酷星社に論文が掲載されています。暦の計算は簡単にできるとのことですが、私にはぱっと見、できそうにないのでノーチェックです。  19番目の日本書紀の暦日についてが重要論文です。これをまとめたものが、『日本暦日原典』の引用になります。この論文の解説(斉藤氏のものと思われる)が興味をひきます。

日本古代史で、日本国家成立の根本文献はいつも『日本書紀』である。そこには神武天皇即位前7年から月朔干支のついた日付のある記事が載せてある。・・・干支のついた暦日記事は『日本書紀』の中に総数900ばかりを数える。現代の学問の常識からいって、紀元前七世紀の日本にこんなキチンとした暦日が行なわれていたとは疑わしい。もしおこなわれていたとすれば、それはいかなる歴法によっていたかが、古暦研究上の問題になる。

小川氏はこの問題解決のために、『日本書紀』の暦日干支について天文暦学的な調査を進めていた。それは昭和15年(1940)のころ完成した。その時小川氏は58歳になっていた。 昭和15年といえば、神武天皇即位紀元で数えると、皇紀2600年に当たる(1940+660=2600の勘定)。明治以降高まり続けてきた皇国史観=神国日本の思想はこのころ頂点に達し、日本は神国であり天皇は万世一系の現人神とされ、「紀元は2600年」と歌う声は日本国中に響きわたっていた。・・・・ さて、当時において『日本書紀』は日本最古の官選の正史であり、そこに記された文章は一字一句に至るまで絶対無謬の聖典とされていた。ところが小川氏の研究結果では、『日本書紀』に記載される古代の暦日は、後世(八世紀)の偽作であり、偽作するのに使った暦法もほぼ推定できる、というのである。 こんな学説をこのような時期に公表したら、たちまち「治安維持法」に引っかかって投獄されるにちがいない。・・・

 当時の状況はわかりませんが、神社の鳥居などに「皇紀2600年」の文字をよく見ます。多分、熱病のようにブームになっていたのだと思います。  しかし日本書紀の暦日問題のことを今まで知りませんでした。重要なことなのに、どうしてなのだろうと思います。本を読む限りは、通説になっているように書いてますが、そうではないのかもしれません。  暦日問題から『日本書紀』での雄略天皇の位置づけがわかったような気がします。

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