2022年1月16日日曜日

出雲国風土記の「古典への招待」

 『新編日本古典文学全集 (5) 風土記』小学館 (1997/10/20)の「古典への招待」に重要な指摘があります。 風土記の文は以下です。。

老細思枝葉。裁定詞源。亦山野濱浦之
處。鳥獸之棲。魚貝海菜之類。良繁多悉
不陳。然不獲止。粗擧梗槩。以成記趣

(訂正出雲風土記より)

太字の部分が重要で、 「亦山野濱浦之・・・以成記趣」のところを「古典への招待」では、

山・野・浜・海岸の所在、鳥・獣の棲息の場、魚・貝・海藻など水産物の種目などは、まことに多くて、あり過ぎるから、悉くは述べなかった。そうではあるが、止むを得ない事項だけは「粗(ほぼ)」あらましを挙げておいて「記趣」を成した。

とあって、自然地名や動植物については「粗」挙げたのみで、それは「記趣」を成すためにすぎない、本当に「主要なことは」はほかにあると、言いたげです。・・・

「粗擧梗槩」の部分は、「粗擧梗概」と「古典への招待」ではなっていて、『文選』では、

「微妙な道理がわかって」いない者の欠点を指摘する表現なのです。

なぜ、「止むを得ない事項」なのか、理由として3つあり、①和銅六年五月の詔で尋ねられているから、止むを得ないのではということのようです。

さて、「老細思枝葉。裁定詞源」の最初に戻ります。「古典への招待」では漢文です(漢文表記がわからないので仕方ないです、すみません)。

「老」は執筆者自身をさすでしょう。・・・自称の謙辞です。

次の八字は、『垂仁紀』二十五年三月、分注、一云にある次の一句と深い関係にあります。・・・

書いてきましたが、以下に「古典への招待」の文がありました。そちらを見てください。

『風土記』を書いた「彼」

要は

執筆者は『垂仁紀』を読んでいて、明らかにこの表現を意識して書いたと断定してよいでしょう。したがって『出雲国風土記』執筆者の意図は、『垂仁紀』の文章の意味と同じ意味に解釈されたいのだろうと思います。

当然、わたしの関心は『垂仁紀』のこの部分に向かいます。スペースの関係で簡単に書きますので、詳しくは上部に引いた『日本書紀』の前後の部分を読まれることを希望します。そこの頭注に「源根」は「大和の地主じしゆ神を祀ることに主眼を置かぬことをいうか」とあります。わたしの推定では、『出雲国風土記』の執筆者、神宅(みやけ)の臣金太理(おみかなたり)という人物を語る大切な部分なのであろうと思います。

それ以上はわかりません。最近になってやっとここまで気づいたところで、最初に掲げた多くの疑問はまだ解くに至りません。国つ神を尊重する立場をとっているようにも思えますが、だからといって、倭(やまと)の大国魂(おおくにみたま)の神を奉ずる一族か、そうでないかもわかりません。現時点ではここまでが学問の領域で、あとは想像の領域なのでしょう。

と書かれています。『垂仁紀』は、伊勢に天照大神が祀られることの経緯の話です。出雲の反発があったということです。
妄想の世界になりますが、古事記から日本書紀編纂にかけて、出雲の勢力は排除されていったと思われます。神宅臣金太理もその一人であったはずです。古事記。日本書紀・出雲風土記にヤマトとイズモの関係の推移が表されています。 「出雲国造神賀詞」については丹後王国 にありますが、倭の大国魂と出雲が結びついています。

参考: 『出雲国風土記』をネット検索したところです。

「出雲国風土記」の原文が載っている資料を探すと、  でいろいろと参照先がわかります。

出雲國風土記 - 国立国会図書館デジタルコレクション にもあります。これらは画像データで読み解くことができできる人にとっては有用なデータです。テキスト化されたデータが以下にありました。文頭のところは、

訂正出雲風土記テキストページへのリンク 

よりの引用です。

訂正出雲風土記
       出雲宿禰俊信謹校
國之大體。首震尾坤。東南山。西北屬海
東西一百卅七里一十九歩。
南北一百八十三里一百九十三歩。
一百歩。
七十三里卅二歩。
 得而難可誤。

老細思枝葉。裁定詞源。亦山野濱浦之
處。鳥獸之棲。魚貝海菜之類。良繁多悉
不陳。然不獲止。粗擧梗槩。以成記趣
所以號出雲者。八束水臣津野命。詔八雲
立語之。故云八雲立出雲。

合神社參佰玖拾玖所。
 壹佰捌拾肆所〈在神祇官。〉
 貳佰壹拾伍所〈不在神祇官。〉

玖郡。鄕陸拾壹。〈里一百七十九。〉
餘戸肆。驛家陸。神戸漆。〈里一十二。〉
 意宇郡。鄕壹拾壹〈里三十。〉餘戸壹。驛家參。
 神戸參〈里六。〉
 嶋根郡。鄕捌。〈里廾五。〉餘戸壹。驛家壹。
 秋鹿郡。鄕肆。〈里一十二。〉神戸壹〈里一。〉
 楯縫郡。鄕肆。〈里一十二。〉餘戸壹神戸壹。〈里二。〉
 出雲郡。鄕捌。〈里廾三。〉神戸壹。〈里二。〉

以下省略。

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