2018年6月5日火曜日

カタカナの「ア」

 安田は阿田とかも表記され、ひらがなの「あ」は安だけでなく、阿とかいろいろあるようです。カタカナのアは漢字の一部、阿の左の偏が取り入れられたもので、800年ころの四分律にあるとのことです(大辞林の日本語の世界、片仮名より)。この四分律は仏教の教典で、鑑真が日本に伝え、その宗派は律宗と呼ばれる。とあります。「あ」の発音する漢字は他にもあるのですが、阿は梵語の第一字母の音訳。→吽とあります。阿吽《あうん》は梵語の音訳で、阿は悉曇字母の最初で開口音、吽は最後の音で閉口音。とあります。
大辞林第二版、1995年11月3日第ニ刷発行、三省堂から見ています。
「あ」の発音する漢字はほかにもあるわけですので、なぜ「阿」になったかということです。
  梵字で見る密教、児玉義隆著、大法輪閣、平成14年6月8日発行
を見ていると阿字観という言葉が出てきました。
阿字観とは
密教における宗教的瞑想法の一つ。この宇宙のあらゆる事象が「阿」という字音に含められるとし,すべてのものがそれ自体すでに根本的であり,もともと生じたり滅したりしないものとする。この真理を体得するための瞑想法。(単語の意味はブリタニカ国際大百科事典より)
 漢字では「阿」ですが、梵字では変換できないので
次のような形の文字です。



 先の本には、弘法大師空海が梵字を体系化したとあります。この文字は胎蔵界大日如来をあらわすとするのが一般的なようですが、諸仏の通種子とのことで、いろんな仏尊をあらわすオールマイティな文字のようです。これらの梵字は、お守り、護符、五輪塔(密教では地・水・火・風・空をあらわす大日如来を具現化したものらしいです)やそれを簡略化した塔婆(語源はインドのストゥーパで仏塔を意味する)、多層塔や宝篋印塔(ほうきょういんとう、塔身に経文や真言陀羅尼を納めた)などの石造物に用いられています。
 古代インドで誕生し発達した梵字は、現在は日本のみで生き残っているということで、仏教を意識する人にとっては阿は一番と感じる漢字(「あ」は梵字で一番最初に習う文字)であったのかと思います。
 現在のヒンディー語では「あ」は下のような文字です。
梵字は日本化していますが、似ていると言えば似ています。


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