『カタカナの正体』山口謠司、河出書房新社 (2016/12/10) にありました。
安然は唐に渡った円仁から教えをうけ、五〇音図の原型の「アイウエオ」の並び方を発明したという流れのあと、144頁からです。
サンスクリット語のみならず、古典ギリシャ語やラテン語を始めて、最初に現れる難関が、名詞の格変化である。
日本語の場合には、主格には「は」、目的格には「を」など助詞がつくことで「格」を判別させるが、サンスクリット語の場合は、名詞が八格に変化する。 主格、呼格(呼びかけ)、対格(~を)、具格(~によって)、為格(~の為に)、奪格(~から)、属格(~の)、処格(~において)八つである。
たとえば、「deva(デーヴァ)」(「神」の意)は、
主格 デーヴァハ
呼格 デーヴァ
対格 デーヴァム
具格 デーヴァーナ
与格 デーヴァーヤ
奪格 デーヴァート
属格 デーヴァースヤ
処格 デーヴェー
のように変化する。
当時、これらの格変化は、「八転声」と呼ばれていた。
ただ、安然は、これを「格」の変化と考えず、動詞の活用のように考えたようである。
なぜかと言えば、当時主格を示す助詞「は」はまだ十分に発達していなかったからである。
サンスクリット語の八格の説明で、為格と与格のどちらなんだということがありますが、与格は違うようです(未確認)。
名詞の変化ということで、面倒だと思い、今まで文法的なことは避けていたので、気づかなかったと思います。主格に「ハ」がついています。実際にはサンスクリット語の名詞の変化は複雑で「ハ」だけではありませんが、日本語の「は」の起源になっても良いのではと思いました。安然の時代には助詞の「は」が未発達ということは、時代的にはあってきます。
八格すべてが、日本語の助詞に影響したとは思えませんが、名詞の格変化が、「名詞+助詞」に変化した可能性は十分あります。
追記:R050317
名詞の格変化ですが、日本語では統一されていないようです。
特に格については、日本語の用語が統一されていないという問題点があり、 たとえば従格は奪格、為格は与格など、さまざまな別名があります。 そこがサンスクリットの先生方の嫌うところとなっているわけです。(https://www.manduuka.net/sanskrit/ogi/index.cgi?doc=e2101)
1格~7格というのもありました。(『ニューエクスプレスプラス サンスクリット語』、石井裕、白水社 (2021/4/15))
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