『データサイエンスが解く邪馬台国 北部九州説はゆるがない』安本美典、朝日新聞出版 (2021/10/30)
この本で、鏡について詳細に述べられています。よく理解できていないのでパスしますが、終わりの方に、鉛同位体比の研究のことが述べられています(p270~)。
鏡の銅原料に含まれる鉛には、質量の異なる同位体があり、産出地でその比率が異なることから、産出地の推定が可能になるということです。
この本の元の文献ではないのですが、まとまったものが以下にありました。
鉛同位体比による産地推定研究の動向 -導入から今後の展開へ向けて、齋藤努
このように,山崎一雄によって導入された鉛同位体比法は,青銅,鉛釉,ガラスなど,幅広い資料に適用され,従来の考古学研究では得られなかったいくつかの重要な指摘が行われた。それらの結果を受け,さらに発展させていったのは,東京国立文化財研究所(東文研:現在の東京文化財研究所)の馬淵久夫と青山学院大学の平尾良光(1987年より東文研に移る)である。彼らは東京国立博物館の西田守夫らと協力し,弥生時代から古墳時代を経て古代にいたるまでの時期を中心として,日本で出土した中国・朝鮮半島系の青銅資料と,日本で作られた青銅資料を系統的に分析した。また,通産省工業技術院地質調査所(現在の産業技術総合研究所地質調査総合センター)から提供を受けた現代の日本,中国,朝鮮半島産の鉛鉱石も測定した。
それらの成果は,馬淵・平尾(1987,1990)など一連の論文にまとめられ,青銅原料の産地に関する大まかな流れが,次第に整理されてみえるようになっていった。 はじめに,中国・朝鮮半島系の青銅資料と日本で作られた青銅資料,それから日本産の鉛鉱石の範囲から,図la,bのような分布図が得られた。おおまかに下記の4つのグループに分かれている。
A:弥生時代に日本へもたらされた前漢鏡が示す数値 の領域。弥生時代に日本で作られた青銅資料の多くはここに含まれる。
B:後漢・三国時代の舶載鏡が示す数値の領域。古墳出土の青銅鏡の大部分はここに含まれる。
C:日本産の鉛鉱石の大部分が含まれる領域(神岡鉱山などの例外を除く)。
D:多鉦細文鏡や細形銅利器など,弥生時代に日本へもたらされた朝鮮半島系遺物が位置するライン。
図1a、
図1b
なお,馬淵久夫の論文では,領域設定が資料に基づいて行われていることと,考古学の型式分類と紛れないようにするために,それぞれにW,E,J,Kを使用している場合がある(順にWeSternHan,EasternHan,Japanese,Koreanの頭文字)。ここでは,その後に新しく設定された他の領域名との整合性を取るために,A,B,C,Dを使用する。
結果の表示には,通常,グループ分けが有効に行えるように,同位体比が変動する206pb,207pb,208pbを組み合わせた207pb/206pbと208pb/206Pbの図が使用されるが、(図la)が,これには地球科学的な意味はない。また, この表示だけでグループへの帰属がわかりにくい場合には,206pb/204Pbと207pb/204Pbの図が併用される(図lb)。 こちらは地質年代などを得るのに地球科学で従来から用いられている表示法で,特にB領域とC領域の識別をするのに有効である。前者はa式図,後者はb式図とよばれている。
このA,B,C,Dでは終わらずに、韓国出土のものが出てきていて、グループGA、グループGBで示されるものです。図3です。
図3
中国と日本だけでなく、朝鮮半島も考えないといけないことになります。中国→日本だけでなく、中国→朝鮮半島→日本といいうことも見ないといけないようです。鏡などの細かい特徴なども大事になってきそうで、簡単ではなさそうです。
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